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ユナイテッド93/ポール・グリーングラス [北米・南米映画]

9.11を描いた映画はこの後もオリバー・ストーン監督の『ワールド・トレード・センター』が公開を控えている。管制塔とハイジャックされた飛行機内の再現ドラマの感があるこの映画は、何よりもめまぐるしい、しかも揺れまくるカメラワークがとにかく印象的。感情移入してしまうとつらくなりそうな臨場感に、いまいち感情移入しきれない自分がいてスクリーンと自分との間が妙に気になったり。
そもそもポール・グリーングラス監督は『ボーン・スプレマシー』だって一作目のダグ・リーマンの『ボーン・アイデンティティー』の方がよっぽどいいと思ったのだ。「演出力」だの「観客に考えさせる力」だので褒めている人もいるようだがさほど新しいことをやっているとも思えない。
キネ旬で樋口尚文氏が書いていた「例えば犯罪の実話に取材した「愛のコリーダ」「少年」「復讐するは我にあり」「ホテル・ルワンダ」「ミュンヘン」は単純な正邪の彼岸に観る者を連れてゆく瞬間があり、人間の解らなさに向けて観る者の思考を開いてゆくところがある。」という文章に激しく共感。結局今村&黒木監督特集で一番良かったのは『復讐するは我にあり』だった。これは一度観ているはずなのに全く初見のごとき強い映画的快楽を感じた。細部の記憶が退屈の原因にはならず、むしろ意味の重層化に役立つような・・(それは言いすぎか)。しかしこの位のことが映画にはできるのだから、とやはり思ってしまう。
次に続く樋口氏の文章、「映画は、その天性の猥雑さで、言論が生来抱えるヒステリックな硬直を解いてゆく立場にあるのでは、と思う。」で少し考え込んでしまう。だとしたら映画について書くことはその猥雑さを逆に硬直させてしまうことなのだろうか。映画について書く時に感じる微妙な苛立ちや罪悪感はそれが原因なのだろうか。しかしそれでもなお、違う何かを求めてキーボードを打ち続けてしまうものなのだと思うのだが。その違う何かとは一体何なのだろう。


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