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なんで映画なんだろう [エッセイ]

土曜の午後中映画を観たりしていると、映画館を出た瞬間さすがになんで自分はこんなに映画ばっかり観ているんだろうと素朴に疑問に思う時がある。友人や恋人との語らいとか、親孝行とか、子育てとか、自己研鑽とか、もっと別の時間の使い方も当然あるだろうに。

私が映画をどうしても捨てられない理由を考え始めると、浮かぶのは何故か「生涯の一本」といった類の映画ではなく、そもそも映画ではなく、ロベール・ルパージュの『月の向こう側』という一人芝居だ。人類が持ってきた、或いは今後も持っていくであろう野心と、幻想と、幻滅が、決して限定されることのないイメージの膨らみの中に浮かび上がってくる芝居。

野心や希望を持つのは人間である限り当然のこと。でもそんなものを持ってしまうからこそ、挫折や幻滅もある。恋なんてしなければ、失恋することもないのに。そんな人間の姿を、切実に誠実に描けているのは、最近はドイツ映画のような気がする。ファティ・アキンの『愛より強く』、クリスティアン・ペツォルトの『イェラ』など。

そして? 結局最初の問いに戻る。私の映画好きは一体何のためなんだろう。でもなければ生きていけない。というのは言いすぎで、実際生きていくだけならできるのだろうが、より強く、生きていく勇気を与えられる。というのは、私自身が、野心や希望を人よりも持ってしまうタイプだからだろうか。

昔、大学時代の先生が、「映画を観るということは、やはり現実逃避の側面もある」というようなことを言っていて、反発を感じたことがあった。それは半分事実だからということもあるだろうが、映画館の中だけで起こっている出来事が、やはり現実にも影響を与えるのではないかと、私は思ってしまう。じわじわと、ゆっくりと、何かが変わっていく。

いい素材を使い、心をこめた料理が人を健康にするように、どんな時でも希望を持ち、闘ってしまう切実な人間の姿を描けている映画は、人を変えることができると、どこかで信じている。


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