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『靖国』上映開始 [ドキュメンタリー]

『靖国』上映が3日から開始された。『靖国』上映中止に関する特集をしている「論座」、「映画芸術」を読む。「論座」の是枝裕和氏の「(前略)いいドキュメンタリーほどメッセージは複雑で、受け取られ方も複雑になる。だから、見た人が受け取るメッセージというのは、実は作品に付随しているのではなく、その人の内部にあるんです。「靖国」を見て、偏向していると言う人間がもしいるのであれば、それはその人の内部にそういう偏りがあるということ。」という一文に、溜飲が下がる。

「論座」でも「映画芸術」でも、『靖国』のドキュメンタリーとしての出来に疑問を呈している筆者がちらほらといるが、彼らの主張は主に「長い」「焦点が定まらず、間延びしている」(長谷部恭男氏/論座)、「ユルい。ドキュメンタリーは痛いところを突かないといけないのにそれができていない」(寺脇研氏/映画芸術)などというもの。これは褒める論者が指摘する「作者のナレーションを排し、観客(カメラ)に向かっての被取材者のメッセージも排したその構成は、選び抜かれたハダカの事実の羅列だけで、人々に衝撃を与え、無知を悟らせる力を持っている」(暉峻創三氏)の裏を返せば、のようなところもあると思う。

今一歩踏み込めていないのはやはり監督が日本に長く住んでいる中国人だからということが大きいのではないか。日本に住んだことがなく、愛も感じていなかったのならもっと踏み込んで、もっとそれこそ右翼の方々が怒るような映画が撮れたかもしれないが。原一男氏は「中国人監督だからこそ、なし得たもの、新たに切り開いたものとは難だったのか。」(朝日新聞5/3)と問うが、私はそもそもこの映画を観た一番の感想は「なんで日本のドキュメンタリストが撮らなかったんだろう・・」というもの。その意味では、勿論原氏のように問いてもよいのだが、「日本の映画監督が撮らなかったのは情けない。李監督にはありがとうと言いたい」(朝日新聞5/3)と言う原将人氏の方がモラル的には正しい気がする(勿論ドキュメンタリストにモラルを求めているわけではないのだが)。

しかし全く撮らなかったわけではないですよね。土屋豊氏の『あなたは天皇の戦争責任についてどう思いますか? <96.8.15靖国篇>』があります。未見だけど・・。


論座 2008年 06月号 [雑誌]

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