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「アンデルセン・プロジェクト」&藤井慎太郎氏レクチャー [演劇]

「月の向こう側」ほどの感動を味わうことができるのか、という一抹の不安がないわけでもなかったのだが、その不安は的中してしまう。単純に、ルパージュは抽象的なテーマの時の方が優れているのではないかと思った。一つの物が様々な物に、一人の人間が様々な人になる変身・変容の驚きも、単純に「月の向こう側」の方が多くの見せ場があったように思う。
「月の向こう側」は私はなんと三階席で観たので、今回席が良すぎて逆にトリックのピアノ線等が見えてしまい、少し興ざめてしまったというのもあるだろうか。映画と違って演劇は三、四列目で観るっていうのも意外と良し悪しなのだなぁなどという感想を持つ。それにパリに住むモロッコ系の青年の人物造形は、少し紋切り型ではなかったか、などが気になる点。
しかし後ほど藤井氏が述べていたように「一見オシャレな話」に見えてしまう「月の向こう側」に較べたら、「アンデルセン・プロジェクト」の方がルパージュの暗い面がよく出ていたかもしれず、そのあたりはルパージュの他の作品を見ていない私の方に非があるかもしれない(というかそもそも私は演劇はあまり観てないので、それを考慮した上で読んでください)。藤井氏がルパージュに嵌るきっかけとなった「太田川七つの流れ」とか、観たかったけどなぁ。
早稲田大学文学部助教授である藤井慎太氏のレクチャーは、ケベックという州の特異性から始まる。ケベック・・ケベック・・そういえば去年フィルメックスでカナダの監督の映画観たな!!などと思いついたのだったが、ガイ・マディンの出身は別にケベックではなくウィニペグだったね(全然違うじゃん)。あくまでフランス語にこだわり、お店の名前等もフランス語にしなければいけない州、ケベック。英語よりはフランス語の方がまだ得意な私は少し行ってみたくなる。ルパージュの演劇はたいていフランス語版と英語版があるのだけれど、藤井氏によるとケベック訛りのフランス語を時折混ぜるフランス語バージョンの方が面白いのだそうだ。そういえば「アンデルセン・プロジェクト」でもフランス語訛りの英語が結構面白かった。
ルパージュの劇の足跡を追ううちに、その年月の広大さ(初主演作品から20年)、地域の広大さ(カナダ、ロンドン、パリ、日本)、それを追いかけている藤井氏の熱意にクラクラとしてくる。
最後にルパージュの映画を少し観てから質問コーナー。テレビで見たルパージュのインタビューで、「映画は観客との対話がなくて閉鎖的だ」というような、映画に批判的なことを言っていたのが気になっていた私は早速質問。「演劇においての観客の対話」とは一体どのようなことか、ということを聞きたかったのだけれども、ルパージュ以上に熱く演劇の現在性、身体性、一回性について語りだす藤井氏に圧倒され、ただ頷くのみ。
そうなんだよねぇ。特集上映に来ていない仲間を「あいつ来てねえな」とくさすシネフィルの閉鎖性、違う派閥の評論家の悪口を枕詞にしないと何も書けなさそうな映画評論家、ま、いいんだけどさ、関係ないから、でもそもそも私自身気に入った映画をけなされたり馬鹿にされたりすると無性に腹立つんだよねぇ。全部、幻想、自意識の投影、一方通行って気がしないでもない。ま、それが悪いっていうわけでもなく(悪いって言っても始まらないし)、どこまで自覚的になれるかなんでしょうか。
「アンデルセン・プロジェクト」、ルパージュ版は6/30までですが、白井版が7/1~8に公演されます。http://www.parco-play.com/web/play/sept/andersen/


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