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ドイツ映画祭2007 [映画祭]

映画祭では一般公開されないものが上映されるので、ついつい足を運んでしまいますが、最近ロードショー作品すらあまりまともに追えていない私。本末転倒なのではと思いつつ、今年のドイツ映画祭は「ベルリン派」のリーダーと言われるクリスティアン・ペツォルト監督の新作『イェラ』から鑑賞し好調なスタートを切りました。

破産した夫と別れたばかりのイェラが、夫につきまとわれるシーンから映画は始まり、そのトップシーンの緊張感が最後まで全く途切れない。最近多忙で映画の途中で気を失ったり筋がわからなくなったりすることが多いのですが、面白い映画というのはいくら疲れてようと眠かろうと画面に引き込まれてしまうのものなのだなぁと痛感(多分)。ドイツ映画祭2005で観た『幻影』と同じような虚実の狭間を行き交うような、そして結局はどこにも行き着かないというような、しかし映画内にはついつい反芻せざるを得ないような印象的なシーンがいくつもあり、私はこの人の作風はかなり好きですね。ペツォルト監督は40代後半の男性で、ベルリン派のリーダーと言われているらしいですが、女性のけなげさや可愛い部分と同時に計算高さのような醜い部分をリアリスティックに描ききるところも評価できるところだと思います。これは冒頭近くの車のシーンなど少し『オープン・ユア・アイズ』を彷彿とさせるところがあり、『幻影』のように地味な映画ではないので、一般公開しても客足は見込めるのではないでしょうか。お勧めです。

続いてシュテファン・クローマー監督の『サマー'04』。これは実はついでで観たのですが、意外な拾い物。別荘地で両親と息子、そのガールフレンドに、ある現地の男性が絡んでくることによって起きるひと夏の出来事を描いています。これも五人の間の火花が散るような緊迫感がすごい。ちょっとした一言で発生した不穏な空気に、ハネケの『ファニーゲーム』などを想起してしまったりしたのですが、映画はそっち方面に行くわけではなく、衝撃の、というよりは不思議な暖かさを醸すラストを迎えます。主演のマルティナ・ゲデックは、『素粒子』で観た時はさして魅力を感じなかったのですが(映画自体なんだかすっきりしない映画でしたね)、この映画では幅の広い魅力を醸しだしています。

そして「ベルリン派」の最も若きメンバーとして、06年のカンヌ映画祭で最優秀脚本賞を受賞したというマティアス・ルートハルト監督の『ピンポン』。これも夫婦と息子の三人家族に、甥が夏休みに居候することによって生じる家族間の亀裂を描いています。続けて観たせいもありますが、家族間の緊迫感などは『サマー'04』との類似を感じました。中年女性の奔放さという点でも共通しているかな。主役のパウルを演じたセバスティアン・ウルツェンドフスキーの魅力が大きい映画で、ティーチインでも話題に出ていましたが蝿や犬などの使い方など、むしろ演出が優れているのではないかと私は思いました。脚本は『サマー'04』の方が面白いのではないかと。

いずれにせよ三作とも非常にレベルの高い、面白い作品でした。ベルリン派のことでも調べてみようかな。


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