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とはいえ、ドキュメンタリー [ドキュメンタリー]

を観るのは止められない。未見だった『ヨコハマメリー』をDVDで。しかし白塗りで背骨が曲がったメリーさんは勿論、ビジュアル的には胸を締め付けられるのだけれど、「メリーさんはああだった」「メリーさんはこうだった」という何人かの証言を聞いているうちに、映画が凡庸さの方に摺り寄っていくようなもどかしさを感じざるを得ない。そしてラスト、養老院で普通のおばあさんのように静かに暮らしているメリーさんに会いに行くシーンになって、監督の意図がすっかりよくわからなくなってしまう。

ちょっと題材に寄りかかりすぎじゃないか。まだ監督は若い男性らしいので、それ以上の突っ込みようは難しかったのかもしれないけれど、これじゃあ「パンパン」や「娼婦」が一般人の哀愁をそそる記号でしかない。それ以上をやるのが映画監督の仕事ではないだろうか。

「牛腸茂男の眼差しについての映画を作るにあたって、自分なりにいくつかの決め事をした。その一つが、関係者のインタビューは撮らないということであった。牛腸の写真が持つ眼差しの謎を映画の中で友人や遺族の言葉によって証言させてしまうと、どうしてもその言葉が解答になってしまう。彼の写真は、言語表現を超えた一瞥の力にある。それを証言という言葉でまとめあげてしまったら、凡庸のそしりを免れないドキュメンタリー映画になってしまう。」

上記は『SELF AND OTHERS』について佐藤真監督が書いたものだ。勿論題材が違うのだから、佐藤さんがやった方法を『ヨコハマメリー』でもやれば良かったのだなどと単純かつ乱暴なことを言うつもりはない。しかし佐藤さんならメリーさんを養老院まで撮りに行くなんてことは少なくともしなかっただろうな・・・・。


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