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2008年ベスト10 [映画年間ベスト10]

1.歩いても歩いても/是枝裕和
2.HANAMI/ドリス・デリエ
3.静かな光/カルロス・レイガダスhttp://miyukinatsu.blog.so-net.ne.jp/2008-09-18
4.ジェリーフィッシュ/エトガー・ケレット&シーラ・ゲフェンhttp://miyukinatsu.blog.so-net.ne.jp/2008-03-27
5.デルタ/ムンドゥルツォ・コルネール
6.4カ月、3週と2日/クリスチャン・ムンギウ
7.接吻/万田邦敏http://miyukinatsu.blog.so-net.ne.jp/2008-03-27
8.シルビアのいる街で/ホセ・ルイス・ゲリンhttp://miyukinatsu.blog.so-net.ne.jp/2008-10-25
9.PASSION/濱口竜介
10.クローンは故郷をめざす/:中嶋莞爾http://miyukinatsu.blog.so-net.ne.jp/2008-10-19-1
11.青い鳥/中西健二http://miyukinatsu.blog.so-net.ne.jp/2008-10-19
12.ハンガー/スティーブ・マックィーン http://miyukinatsu.blog.so-net.ne.jp/2008-10-26-1
13.ぐるりのこと/橋口亮輔
14.闇の子供たち/阪本順治
15.王妃の紋章/チャン・イーモウ

今年もコメントしてない作品が多くなってしまった。一位から順に。『歩いても歩いても』、これまで、是枝監督に対してはどうしても手離しで評価する気になれなかった。人間の描き方自体に、倫理的な問題があるような気がしていたのだ。この作品によって、やっと、この監督がやりたいことが理解できたような気がした。阿部ちゃんも、夏川結衣も、樹木希林、原田芳雄も、それぞれが「そうしなければならない」業を抱え、それは図らずもお互いを傷つけたりする。決して和解しないまま、平行線のままでありながらも触れ合う新旧の家族を、彼らのある記憶を、まるで植物を描くかのようにありのままに描くことに成功し、それによって映画はかつてない透明感を獲得している。
2位、『HANAMI』、これも同じような家族の「業」の話である。日本滞在の息子の馬鹿さ加減、レズビアンの娘のスレ具合がリアリティがあり、それが利いているような気がした。もしかしたら『東京物語』より好きかもしれない。
5位、『デルタ』、これだけ禍々しい「事件」を体験したのは久しぶりだ。
6位、『4カ月、3週と2日』、これも紛れもない「事件」をまざまざと体験させてくれた1本。そして事件の発端の当の本人はケロッとしているという寒々しいおまけつき。
9位、『PASSION』、完成度からいうと決して高いわけではないと思うが、撮影期間と、これが卒業制作という監督のキャリアを考えるとやはり驚異的。観ていると増村保三、万田邦敏、ロメールなどの名前は当然脳裏に浮かぶのだが(ご本人はカサヴェテスの『フェイシズ』を挙げているようだが)、そんなことよりも叔母のアパートに3人が集まった一夜はまるで『モード家の一夜』のように柔らかい光とともにいつまでも記憶に残る、そちらの方がよほど重要だと言いたい。勿論制約のせいだと思うが、登場人物の描き込みの深度に差があり、よってラストが多少不可解なのが残念。

あと、ベスト15圏外ですが『人のセックスを笑うな』について。最近DVDを観た男性観客の、ユリもえんちゃんも現代の女性の理想化された姿なのだろう、などという感想を読んでちょっと言いたい気が・・。実際問題、私はユリもえんちゃんも(勿論キュートなのですが)かなりこそばゆく感じた。特に私が腹立たしくなったのは、ユリのお腹がぺったんこだったことだ。これは原作のみるめのユリのお腹に対する、「ぽっちゃりとしたお腹。あの、へその下の盛り上がった、丸い部分に名前はないのだろうか。(中略)オレはそこを何度も、撫でたい」という美しいモノローグが、とても好きだったからで、原作はこの斬新なモノローグがあることによって、凡庸な年上女と年下男の恋愛話から抜け出ていたのに、お腹ペッタンコの永作が演じることによって、映画は「凡庸ないい映画」に収束されてしまった気がした。
それからユリの起き抜けの髪のボサボサ度も足りない気がする。これは原作が賞を取った時に松浦寿輝氏を「こんな寝汚い女に恋なんかするか」と激怒させたいわくつきの描写で、つまるところボサボサ度が足りない映画の方はそれだけアグレッシブさを欠いているのだ。私は「いい映画」よりアグレッシブさの方を買う。

今年はおまけとして縁あって観ることができた日本未公開作品を挙げます。機会があったら観てみてください。
1.Rain/Paula HERNANDEZ(Argentina)
ブエノスアイレスの都会の片隅で偶然出会った、お互いにパートナーがいる男女が束の間心を通わせる、ハートフル・ラブストーリー。女性監督にこだわってみたことを祝福する気になった1本。こういうラストは残念ながら男性にはなかなか撮れないのです。ブエノスアイレスの街の美しさにも痺れた。
2.Once upon a time in Provinces/ Katya Shagalova(Russia)
こちらも女性監督です。こちらはむしろなかなか男性がなかなか行かないシビアさの方に向かっている気がし、かなりの力量を感じました。田舎の狂気に捕らえられていく女性たちの悲壮な姿がひたすら美しい。
3.ATHANASIA/ PANOS KARKANEVATOS( Greece)
こちらも女性問題を扱っているということで押した1本でした。ギリシャの自然の中で一人の女性が社会的に葬られていくまでを描いていながら、淡々とした美しさがありました。
4.Barah Aana/Raja Menon(India)
特にインド映画らしい特異性がなく、普通に面白い映画でした。恋、犯罪、アクシデントと映画を面白くするものが全て入っています。インドの身分差別を観客に体感させる設定も秀逸。Naseeruddin Shahが出ています。
5.Before the burial/Behnam Behzadi(Iran)
監督はバフマン・ゴバディ監督の「HARF MOON」という映画で監督とともにシナリオを担当しています。フラッシュバックの繰り返しなど話法が面白いが、夜のバス内や胡乱な男の様子、天候を生かした演出もよかった。

今年は単純に多くの映画を観ることができた年でした。しかしそのこと自体よりも、そのことによって自分の映画に対する方向性がはっきりしてきたことを喜びたいです。来年もより深めたいです。


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