SSブログ

特集上映「アジア映画で<世界>を見る」 [アジア映画]

「アジア映画で<世界>を見る」(作品社)の刊行を記念して、1/26(日)と2/2(日)にアテネ・フランセ文化センターで特集上映「アジア映画で<世界>を見る」が行われます。
http://www.athenee.net/culturalcenter/program/as/sekai.html
アピチャッポン・ウィーラセタクンの『メコンホテル』が中心になっていますが、これはそもそも書籍の方で、一番登場回数が多いのが『メコンホテル』なのです。

まず四方田犬彦氏が、この中編がいかにアピチャッポンの出生地であるタイのイサーンという地域の特殊性に寄って撮られたものであるか、いかにわれわれがそれを見過ごすであろうかということを論じます。四方田氏が問うているのは、われわれが(アジア)映画を観るときの眼差しです。そして福間健二氏が「アジアを超えたいアジア」というキーワードを中心に様々な映画作家を論じるなかで、アピチャッポンの映画を「物語とともに生きる」と評します。「500年以上も死ねずにいる幽霊の存在。それこそ「アジアを超えたいアジア」であり、ひとりの女性の生涯の限界を超えて、此岸と彼岸のあいだをさまよっているのだ。」

渡邉大輔氏は、現代アジア映画において目につく「亡霊的」な表象の一貫として、アピチャッポンの映画を捉えます。Jホラーや現代アジア映画のなかで跋扈する亡霊を繋げて考える渡邉氏は、こう結論付けます。「あるアンビエント(環境)の内部で、ひとやモノゆひとでない怪異たちが絶え間なく内在的に生成変化していくさまがゆったりと描かれる。これもまたメディアとネットワークの「亡霊映画」のすぐれた一変種だろう。」

抜粋なので限界がありますが、実際に本に当たって頂ければ、60分あまりの映画について、ここまで様々な見解が、深みのある論が、組み立てられることに驚く方が多いと思います。これが、最前線の「アジア映画」であり、最前線の「アジア映画批評」である、というのが私の考えです。

特集上映では『メンコホテル』の上映を中心に、本でも行った様々な試みを発展させます。まず、「3.11以後の映画の視座」という座談会で、パレスチナとイスラエルの上映や批評の問題が議題となっています。「映画上映や映画批評の政治性とはどこにあるのか」という問いは、本でも答えは出し切れていません。が、イスラエル映画史を四方田犬彦氏に講義してもらい、パレスチナ映画について本でもパレスチナ/イスラエル映画論を執筆している金子遊氏と、『沈黙を守る』などの映像作品がある土井敏邦監督とのトークセッションを行うことによって、また新たな位相で映画と現実の間にある問題を捉えることができるのではないでしょうか。

さらに、「映画を演劇など他ジャンルの枠組みで捉え直す」というのも、本で行った重要な試みの一つです。こちらに関しては、プログラム4にて、エドワード・ヤン論を寄稿した演劇批評家の森山直人氏を中心に、映画監督の筒井武文氏と舩橋淳氏に加わってもらい、シンポジウムを行います。「ヤンが映画を現代映画にした」と言う筒井監督と、「ヤンの映画作りに自身の映画作りも多大な影響を受けている」という舩橋監督が加わることによって、年月を経てますます輝きを増すようなヤン映画の魅力の全体像を豊かに照らし出すことでしょう。

プログラム5は編者の私、石坂健治氏、野崎歓氏三人のトークです。「アジア映画の森」(作品社)や「特集上映 アジア映画の森」からずっと一緒に仕事をしている三人ですが、三人で登場するのは意外にも初めてです。本で行った様々な試みを検証しながら、自身のアジア映画歴を振り返り、いま「アジア映画がどこにあるのか」、「アジア映画を豊かに観る」ための提言など、本だけでなくプログラム全体を統べるようなものにしたいと思っています。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

nice! 0

コメント 0

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。