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村上春樹をめぐる冒険 [書評]

状況は整ったのに、ロードショーに行く気がしない。アカデミー賞取った『クラッシュ』も、話題の『ブロークパック・マウンテン』も『シリアナ』も、勿論『マンダレイ』も、チェン・カイコー好きなのに『PROMISE』さえあのヘンな王冠みたいのにメゲて観る気せず。なんか疲れそうなんだもの・・。風邪と引越しのドサクサに紛れてBS2で観た『カラミティ・ジェーン』と『オール・ザット・ジャズ』は面白かったなぁ。新奇なテーマや、練りに練った脚本や、あっと驚くCGや、観客を奈落に突き落とすラストや、巧妙な演出なんてなくたって、愛すべきキャラクターがちゃんと動いていれば、そこにちゃんと人間が描けていれば、映画なんて面白いはずなのにね。
内田樹氏のブログhttp://blog.tatsuru.com/で、村上春樹の生原稿を古本屋に売ってしまったのがヤスケンだということを知る。朝日新聞では名前まで出てなかったので、もっと有名じゃない編集者なのかと思っていた。内田先生のコメントもなかなか面白いが、私はヤスケンのことをそこまでは悪く思えない。「偉そうでない」編集者になんか逢ったことないし、自分が編集やっていた時だって偉そうじゃなかった自信なんてないし、そもそも「管理」が重要な比重を占めるお仕事なのだから(ページに穴が開いたら執筆者も干されるかもしれないけど、なんとかしなきゃいけないのは編集者なのだから)、執筆者を恫喝するために偉そうにするのもお仕事のうちなのだ。偉そうにしていても「そんなことも知らないの!?」とついつい憤ってしまうレベルの人も存在するので、それに較べたら、やはりヤスケンは本好きだったし編集者としての知識は持っていた方じゃないだろうか。
実は去年の秋頃、最近の村上春樹の著作をまとめて読んだ。『スプートニクの恋人』とか『神の子どもたちはみな踊る』とか『アフターダーク』とか。人に大推薦するかというと微妙なのだけど、通勤電車の中でそれらを読んでいる時間が幸福だったことは確かだ。内田氏が言う「村上春樹に対する集合的憎悪」に関しては、「洋物(アメリカかぶれ?)」「なんだかんだ言って、モテる男性主人公(読者は当然村上氏本人がかぶる)」「キャラクター(かえるくん?)」など、むしろ一つ一つはどうでもいい細部が積み重なって反感や憎悪に繋がっている気がしないでもないが、私が「村上たたき」の反論というか槍玉にあげるとしたら、相応しいのは癌に侵されながら日本の代表的作家の生原稿を古本屋にたたき打った編集者なぞではなく、蓮實さんら村上春樹をみそくそに批判した批評家たちだと思う。

神の子どもたちはみな踊る

神の子どもたちはみな踊る

  • 作者: 村上 春樹
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2002/02
  • メディア: 文庫


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