下山事件<シモヤマ・ケース> [書評]
ドキュメンタリー作家でもある森達也氏の「下山事件<シモヤマ・ケース>」を読み終える。事件自体の概要は昔見たテレビドラマで知っている(非常に怖ろしいドラマだった)し、この本の中で何か決定的な新事実が発見されるわけでもないので、事件に対する感想は特にない。森氏の著作を読むのは初めてではないので、相変わらずの森節でとても面白く読めた。ただアマゾンの読者評(単行本の方)を読んで唖然。けなすコメントばかりで、森氏ってあんまり好かれていないんでしょうか。
確かにちょっと前に放映された森氏に関するドキュメンタリーで垣間見た森氏は、いかにも性格が悪そうだった。でも性格の良いテレビマンとか性格の良い映画作家なんて信憑性ないよね。『A』や『A2』、それにいくつか著作を読めば、森氏なりの矜持や性格の良さは分かると思うんだけど・・。
この本の中でとても好きだった部分を忘れないうちにメモ。
「正義を行使することに、どうしても居丈高になれないのだ。仕方がない。もって生まれた性癖なのだろう。子供の頃がらヒーローものには熱狂できなかった。勧善懲悪がダメなのだ。ヒーローにあっさりとやられる悪の結社の手下たちの日々の営みや心情を想像して、どうしてもストーリーに没頭できなかった。
だからこそ、半世紀前に下山を殺害した男たちが、深夜の線路脇の土手を遺体で担いで歩きながら、ふと見上げたであろう夜空を僕は想像してしまう。」
すごく森氏らしい文章だと思いました。この話はまた後日。
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