O・プレミンジャーの夜 [北米・南米映画]
クリス・フジワラ氏の講演。O・プレミンジャーは好きな監督の一人だが、魅力を語るのが難しい監督だと思う。偏愛する(人は多いだろうが)『ローラ殺人事件』を「好きな映画貸して」という知人に貸して、ケナされ、上手く反論できなくて悔しさのあまり絶交したことがあったっけ。
フジワラ氏の連続講演は私は前回のカサヴェテスの回しか聴いていないが、こちらの監督への思い入れの違いか、今執筆中のプレミンジャー論が来年二月に出版されるという氏の思い入れの違いのせいなのか、示唆に富む指摘が多く、『カルメン』から『Angel Face』まで引用されるシーンもことごとく良かった。私は英語があまり出来ないので、字幕なしで観ると必然的に俳優の外見や身のこなしに目が行くのだが、プレミンジャーの映画のヒロインの美しさには本当にうっとりとさせられる。氏によるとプレミンジャーは典型的な反=メソッドの人らしく、演技者の内面よりも、外面に出てくる記号的なもののみで演出し、それが俳優によっては反感を買うこともあったようだが。
不在の演出、ヒロインの異質な孤独の中での実存、など気になるキーワードを反芻しながら、「喋ろうと思えばいくらでも喋れるけど、ただ今日は『Angel Face』のジーン・シモンズの孤独を思い浮かべながら、プレミンジャーに思いを馳せてください」というフジワラ氏に従い、パリで一度観たきりなものの鮮烈な印象を残している『Angel Face』のラストシーンを思い浮かべる。ああ、何処かで上映してくれたってバチは当たらないと思うんだけど・・。フジワラ氏のプレミンジャー論もとても楽しみ。
コメント 0